上手な退職・下手な退職

退職勧奨は「自己都合」退職扱い?

退職勧奨とは、労働者に対して「会社を辞めてくれないか?」と労働契約の解約を申し入れることです。「退職勧告」とも言います。

この行為自体は違法ではなく、希望退職を募ったり、退職金の割り増しを条件に退職勧奨を行う会社も多くあります。解雇が使用者からの一方的な労働契約の解除であるのに対して、退職勧奨は使用者の契約解除の申し込みに対して労働者が応じる合意退職のことです。

労働者が「直接、間接の退職勧奨に応じて退職した場合」は、退職に「正当な理由」があると判断され、自己都合扱いよりも優遇される会社都合退職となります。

 
 

優遇される点として、退職金の割り増し(一般的に「会社都合による退職金」という)、3ヶ月間の給付制限が課されない、失業給付日数が長くなるなどが挙げられます。

注意点として、退職勧奨に押し切られ、退職届を提出してしまうと「自己都合」扱いとなる場合があります。そうなると、退職金の上乗せがなくなるばかりか、3ヶ月間の給付制限が課せられてしまいます。このような事態にならないために、退職勧奨への対策を以下で説明していきます。

 

退職勧奨には応じない! -「やめません」と意思表示 -

会社側から退職勧奨をせまられた場合、辞める気がないのであれば、勇気をもってきっぱりと「やめません」と意思表示することが大切です。

退職勧奨は、単なる申し入れにすぎないので、社員はこれに従う義務はありません。退職に応じるか否かは社員自身が決定することができるのです。

重要なことは、執拗に退職勧奨を迫られたからといって、安易に退職届を提出してしまわないことです。一旦、退職届を提出してしまうと会社側との合意契約が成立したことになり、その契約を後から撤回することは非常に難しくなるからです。

会社側から「脅された」「だまされた」などの理由がない限りは、立証が難しく、撤回には相当な労力を必要とするでしょう。なので、辞める意思がないのであれば退職届は絶対に提出しないようにしましょう。

■退職勧奨に応じるならば

なお、「こんな会社こっちから願い下げだ」と退職勧奨に応じる場合は、退職の条件を事前に確認しておきます。条件が提示されたら、事実を証明する証拠のため、口頭ではなく文書にしてもらうようにしましょう。退職が客観的にみてやむを得ないと職安に認められれば、給付制限は課せられません。

 

■執拗な退職勧奨は「退職強要」であり違法行為である

社員が退職勧奨に応じなかった場合、遠隔地への配転を命じられたり、嫌がらせなどを受ける場合があります。これは「退職強要」に値し、違法行為にあたります。

労働者は、退職強要に対し、裁判所に行為差止めの仮処分を申し立てることができます。また、執拗な退職勧奨に対しては、内容証明郵便で断る方法もあります。

会社側が執拗な退職勧奨を行う理由として、社員を解雇させるには「整理解雇の四要件」に該当する必要があり、解雇を簡単に行うことはできないからです。

みなさんは、「彼女たちの時代」というドラマを見たことがありますか?深津絵理、椎名桔平が主演するドラマなのですが、そのドラマの中で、椎名桔平が演じる佐伯啓介は隔離部屋に閉じこめられ、退社時間になるまで「待機」を命じられてしまいます。

このような行為は、某大手ゲーム会社でも実際に起こったことですが、これはもはや退職勧奨のレベルを超え典型的な退職強要の例でもあります。

このような事態に陥ってしまったら、すぐにでも弁護士や労働組合に相談しましょう。