上手な退職・下手な退職

退職後の住民税

住民税とは、都道府県民税と市長村民税の総称のことです。住民税は、所得税ような収入に応じて税金を先取りする源泉徴収ではなく、前年度分の所得に対して課税されるため、全く収入のない退職後であっても住民税を支払わなければいけません。しかも、前年度分の収入が多ければ多いほど多くの住民税を支払う事になります。

 
 

 

会社に在職中は、所得税と住民税は厚生年金保険などの社会保険料と一緒に毎月の給料から天引き(源泉徴収)されていました。ところが、会社を退職した場合は、天引きされる給与がないため、自分で直接、納めなければいけません。このように、市区町村からの納税通知書に従って直接納付する方法を、会社が個人に代わって納付する特別徴収に対して、普通徴収といいます。

ここで注意したいのは、この住民税を支払わずにそのまま放置しつづけると、後で驚くほど高い利率で計算された「延滞金」がついてしまいます。請求された住民税を期限内に払えそうもない人は、早めに市役所などに相談しにいきましょう。市町村によっては、失業中の人には特別に「減免措置」を設けているところもあります。

 

住民税の納付額の計算

住民税は、上記で述べた特別徴収という方法によって、前年度分の税額を12回に均分して、6月から翌年5月までの1年間にわたって毎月の給与から天引きされますので、退職した月によってその納付方法が異なってきます。1月~5月末までの間に退職した場合は、特別徴収によって源泉徴収されますが、6月以降に退職した場合は、個人で納付(普通徴収)する必要があります(以下図参照)。

■退職したつきが1月1日から4月30日の場合

1月1日から4月30日の間に退職した場合、前々年の収入に対する住民税が残っていることになりますので、これが退職時の給与から差し引かれます。仮に1月に退職したとしたら、1月分の給与から、前々年分の住民税1月~5月の分が差し引かれ、4月に退職したとしたら、4月~5月分が徴収される事になります。

1月に退職した場合、かなりの税額になるため、給与が赤字になることもあります。

 

■退職した月が5月中の場合

5月中に退職した場合、5月分が天引きされ、前々年分の住民税がこれで終了したことになります。したがって、天引きは1ヶ月分だけで調整分はありません。

 

■退職した月が6月1日から12月31日の場合

退職した月が6月以降12月31日までの期間の場合、翌月以降に特別徴収ができなくなるので、徴収できなくなった住民税の残額は、個人で納付(普通徴収)しなければなりません。ただし、退職前に住民税の残額を給与か退職金からまとめて特別徴収されることを申し出た場合は、その差額分が一括徴収されます。

6月頃に送付されてくる退職後初の納税通知書を見ると、驚くほどの税額である場合がありますが、これは冒頭でも述べたように住民税が前年度の所得に基づいて課税されているためです。退職して収入は減っているはずなのに、住民税は退職前とほぼ同じ税額が徴収されるのです。なお、退職後、再就職をしない場合は、翌々年以降の住民税は減ることになります。

ここで重要なことは、「住民税は翌年の6月から徴収される」ということだけを頭の片隅にでもいれておいてください。