二重派遣とは、一言でいえば「派遣の派遣」のことであり、法律違反にあたります。
例えば、自分の所属する派遣会社から、Aという企業に派遣され、さらに派遣先企業Aから今度は、Bという企業に派遣される事があります。このように、派遣された先から、さらに違う企業に派遣されることを二重派遣と呼びます。
二重派遣ならまだしも、三重、四重にもなる多重派遣になっているケースも珍しいことではありません。わたしが働いていた派遣会社でも、最大で、四重派遣されていたこともあります。こうなると、自分がいったいどこの派遣社員だったのか、一瞬忘れてしまうぐらいです(笑)。
こうした二重派遣は、2つの法律に違反していることになります。
(1) 労働者派遣法違反
(2) 職業安定法第44条違反
まず第一に、派遣とは、自分の会社で雇用契約を結んだ派遣スタッフを別の会社で働かせることであり、そこからさらに雇用関係にない別の会社へ派遣させることは、労働者派遣法違反にあたります。
次に、職業安定法第44条には「労働者供給事業の禁止」が明示されており、「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」と記載されています。
二重派遣は、この労働者供給事業の禁止事項にあたり、違反が発覚した場合、派遣先会社と派遣元会社、ともに処罰の対象となります。さらには、業務内容が契約と異なるようなことになれば、労働者派遣法違反にもなります。
二重派遣は、法律上では違法行為にあたりますが、実際に派遣の現状を見てみると、二重派遣はごく当たり前のように行われています。
特に、ITエンジニア系の派遣では、優秀な人材はのどから手が出るほどほしいはずなので、派遣先からさらに別の派遣先へ派遣されることは珍しいことではありません。二重派遣を行うことは、派遣先企業にとっては、マージンだけで利益を得ることができるので、非常においしい話なのです。それが優秀な人材ともなれば、さらに時給額は跳ね上がります。
例えば、自分の職属する会社が時給3500円の契約で派遣していたとしたら、派遣先企業はさらに別の派遣先にたいして、4000円で派遣します。そうなると、派遣スタッフの1日の労働時間を8時間としたら、 8時間 X 500円 で一人当たり4000円あたりのマージンをとることができるのです。
だからといって、派遣スタッフ自体の時給は全く変わりません。自分にはなにも利益のないことにたいして、違法行為が行われているのを黙認しておく必要はないし、そのまま黙って働きつづけたら、トラブルが起きたときに自分の首をしめることにもなりかねません。
したがって、「あれ?ひょっとしてこれ、二重派遣ってやつ?」という疑いをもったら、派遣元の担当者、もしくは労働基準監督署や社会保険事務所などに相談するようにしましょう。