日本の医療保険制度は、国民全てがいずれかの健康保険に加入する「国民皆保険」制度をとっています。どの保険に加入するかは自分で選択します。例えば赤ちゃんなら親が加入する健康保険の扶養者に、農業・自営業の人は国民健康保険に加入するといった具合にです。
まず、医療保険の仕組みを簡単に説明すると、医療保険には、民間の会社で働く人を対象とした「健康保険」、公務員などを対象とした「共済組合」、船員を対象とした「船員保険」、その他、農業や自営業で営む人を対象とした「国民健康保険」などがあります。
勿論、会社を退職したからといって健康保険に加入しなくてもいいということにはならず、必ずなにかしらの健康保険に加入する必要があります。会社を退職すると健康保険の被保険者資格は、退職した日の翌日に喪失します。退職後に健康保険の手続きをしないでいると、病気やケガをした時に、治療費を全額自費負担することにもなりかねません。
退職後にすぐに再就職する事を考えていない場合は、自分にとって有利となる健康保険に加入するようにします。退職後、国民健康保険に切り替わると、驚くほど保険料がアップする事があります。それは、国保の保険料が前年度の所得に応じて決められるためです。加入手続きの期限が非常に短いものもありますので、退職後、スムーズに自分にあった医療保険を移行できるように、事前に下調べをしておきましょう。
それでは、退職後の健康保険の選択肢にはどのようなものがあるのか、以下で具体的に説明していきます。医療保険を選ぶ際の最重要ポイントは、保険料や自己負担額を比較検討することです。
①再就職先の健康保険に加入する
退職後、すぐに再就職もしくは転職をする場合には、再就職先の健康保険に加入します。
②離職前の会社の健康保険を任意継続する
2ヶ月以上の健康保険の被保険者期間があり、退職の翌日から20日以内に手続きをすれば、離職前の会社の健康保険を任意継続することができます。この制度は、他の健康保険に移行するためのつなぎの役割を持っているため、加入期間の上限は2年間までです。
任意継続は、国民健康保険に加入するよりも支払い金額が安い場合があり、国保の料金と比較してどちらか安い方を選択すると良いでしょう。保険料は、市町村の国保課に電話で問い合わせれば教えてくれます。詳しくは、以下のリンクを参考にしてください。
③国民健康保険に加入する
会社を退職後、健康保険を任意継続しない人や、すぐに再就職をしない人は国民健康保険に加入します。国民健康保険への加入手続きは、離職した翌日から起算して14日以内に住所地の市区町村役場で行います。その際、健康保険の資格を喪失したことを証明する「被保険者資格喪失証明書」を添付する必要があります。
保険料の額は、市区町村によって異なるため、収入が同じでもその人の住んでいる市区町村によってその金額は大きく異なります。
国民健康保険に加入後、再就職をした場合には、再就職先の健康保険に加入後、市区町村役場にその旨を届け出ます。
④特例退職者被保険者になる
健康保険組合が独自に行う特例退職被保険者に加入すると、医療費の自己負担額(3割)が一定額を超えると後で戻ってくる一部負担還元金などの付加給付があり、また、退職直後の国民健康保険料と比べて一般的に安くなります。
加入要件は、老齢年金の受給開始年齢に達している人で、厚生年金や共済組合などの被用者年金保険の被保険者期間が20年以上(40歳以後における被保険者期間が10年)ある人が対象となります。
⑤家族の健康保険の被扶養者になる
家族の被扶養者として健康保険に加入すると、保険料がいらないものの、年収が130万円未満の人という一定の条件付きで加入する事ができます。
退職後、思うように働く事ができず、家族の収入で生活を維持せざるを得ない人は扶養される立場になるので一定条件を満たせば健康保険の被扶養者となることができます。