派遣社員でも雇用保険に加入することができます。
雇用保険とは、会社を退職した際に「失業給付金」を受けられる制度のことで、一般的には「失業保険」と呼ばれます。そして、この雇用保険と労災保険をひとまとめにしたものを「労働保険」といいます。社会保険が完備されている会社なら、まず間違いなく雇用保険にも加入しているでしょう。
派遣社員が雇用保険の被保険者資格を満たす要件は以下のふたつです。
■派遣社員の雇用保険被保険者資格(1) 1年以上継続して雇用が見込めること(反復継続の場合も含む)
(2) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
この条件は、正社員採用ならば特に問題はないのですが、派遣の場合はやや複雑になります。
それは、(1) の「1年以上継続して雇用が見込めること」という点が、派遣スタッフの雇用保険加入資格要件を複雑にしています。というのも、派遣スタッフの場合は、数ヶ月単位で異なる派遣先へ派遣されることが多いため、どの時点で1年以上の雇用が見込めるのかを判断するのが難しいからです。
例えば、派遣会社と6ヶ月の雇用契約を結び、次の派遣先へ4ヶ月間、さらに次の派遣先へ2ヶ月間派遣された場合、合計して1年になりますが、果たしてどの時点で雇用保険に加入することができるのでしょうか。
まず、間違いなくいえることが、同じ派遣元で1年以上継続して働いた場合、雇用保険に強制加入されます。ただし、待機期間が長すぎる場合は、1年を超えても雇用保険の被保険者資格を満たせない場合があります(後述)。
■どの段階で雇用保険に加入することができるのか?
次に、1年以上継続して雇用が見込まれる場合を考えてみましょう。例えば、派遣会社に登録後、最初の仕事の派遣期間が2ヶ月契約であった場合、その時点ですぐに雇用保険に加入することができるのかどうかです。
結論から言えば、加入することができます。ただし、2ヶ月後も反復継続して同じ派遣会社で就業する予定であるという条件が必要となります。もし仮に、派遣会社との契約が2ヶ月間きっちりで終了すると最初から決まっているのであれば、雇用保険の加入資格要件を満たすことができません。
派遣スタッフは、派遣会社と雇用契約する段階で、雇用保険へ加入したい旨をはっきりと伝えるようにしましょう。一般的に、派遣スタッフ側が雇用保険に加入したいという意思を示したとき(=つまり、1年以上働く意志を示したとき)、派遣会社側は雇用保険への加入を拒むことができないはずです。
■待機期間が長い場合は雇用保険に加入できないことも!?
派遣先の契約が切れ、次の仕事に移るまでの待機期間が長すぎる場合、雇用保険への加入資格要件を満たすことができません。厚生労働省の指針では、待機期間の説明として以下の2つのパターンを提示しています。
(1) 2ヶ月程度の雇用契約を1ヶ月の待機期間を挟んで繰り返す場合
(2) 1ヶ月の雇用契約を数日の待機期間を挟んで繰り返す場合
(1) の「2ヶ月程度の雇用契約を1ヶ月の待機期間を挟んで繰り返す場合」の具体例を図示したものが以下図になります。待機期間が2ヶ月以上続いてしまうと雇用保険への加入資格を満たすことができなくなりますが、1ヶ月程度の待機期間であれば、雇用保険加入資格要件を満たすことができるというものです。
ここで問題となるのは、上図はあくまでも、これから先こうなるであろうという未来図を示したものであって、実際には未来のことなど予測できるわけもありません。最初の派遣契約が満了後、その後の待機期間が何ヶ月続くかなんて派遣元との雇用契約時にわかるはずがないのです。
こうなると、やはり派遣会社との雇用契約時に、雇用保険へ加入したいという意思表示をする以外、派遣スタッフがとれる自衛策はないことになるでしょう。派遣会社によっては、2ヶ月後に雇用保険に加入できるようにしているところもあるようです。