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派遣社員は社会保険に入れるの?

派遣社員として働く上で、社会保険を受けられるのかどうかも気になるところです。結論からいえば、以下で説明する条件を満たせば当然の権利として社会保険に加入することができます。というよりも、派遣会社側で社会保険への加入が義務づけられています。

社会保険は、複雑なので詳しく知らないまま、そのまま働いている派遣スタッフも多くいますが、社会保険は自分自身を守るための数少ない後ろ盾となるものなので、少し長いですが、最低限、このページに記載されていることぐらいはきちんと頭の中に入れておきましょう。

 
 

社会保険とは、「健康保険」と「厚生年金」(あるいは、「国民健康保険」と「国民年金」)をひと括りにしたもので、日本においては「国民皆保険」「国民皆年金」制度をとっており、日本国民は必ず何かしらの保険や年金制度に加入しなくてはなりません。

会社で働くサラリーマンであれば、一般的に健康保険と厚生年金に加入することになり、会社を退職すれば国民健康保険と国民年金に切り替えるのが一般的です。

社会保険への加入資格要件は、「2ヶ月を越える雇用があること」と「労働時間が所定労働時間の4分の3以上であること」と決められており、この条件を満たす場合には社会保険に加入しなければなりません。これは、勿論、派遣会社側がしなくてならない義務事項ということになります。

・2ヶ月を越える雇用があること
・一般社員の所定労働時間の4分の3以上働いている
(1日8時間週40時間であれば、週に30時間以上)

なお、契約期間が1ヶ月であったとしても、更新して2ヶ月以上働くことが確実であれば、社会保険に加入しなければなりません。

 

健康保険?国民健康保険? -派遣スタッフと派遣会社双方の言い分-

派遣社員であっても、上記で説明した2つの条件を満たせば、社会保険に加入しなければなりませんが、派遣スタッフ、もしくは、派遣会社側が社会保険への加入を渋る場合があります。

双方にはそれぞれの理由があります。まずは、派遣会社側の言い分から見ていきます。

派遣会社が社会保険への加入を渋るケース
派遣スタッフが社会保険への加入を渋るケース

 

■派遣会社が社会保険への加入を渋るケース

派遣会社が健康保険への加入を渋る理由はただひとつ、社会保険の会社負担分を減らそうとするためです。健康保険は、事業主(派遣会社)と派遣スタッフの間で折半して支払わなければなりません。

派遣会社側からしたら、社会保険料の支払いは利益率をさげるもので、できれば支払いたくないと考えています。派遣会社によっては、「○年以上働けば、加入することができる」という制度を設けている場合がありますが、これは完全な違法です。

また、派遣会社によっては、2ヶ月以上仕事が継続するにも関わらず、2ヶ月以下の雇用契約を結ぶ場合もあります。例えば、6ヶ月の雇用契約にも関わらず、更新期間を2ヶ月とし、最初の2ヶ月は社会保険に未加入とするパターンです。派遣会社側はこの2か月分の社会保険料が浮くことになります。当然、これも法律違反です。

 

◎労働者派遣法の改正によって厳しくなった罰則

労働者派遣法の改正によって、不正発覚後、2年間に遡って保険料を徴収することができるようになりました。これにより、どこの派遣会社も社会保険の加入に対しては、積極的に行っています。

◎派遣元は派遣先に派遣スタッフの被保険者資格の有無を通知しなければならない

これも労働者派遣法の改正によって新たに制定されたもので、派遣元は派遣先に対して健康保険の被保険者資格があるかないかを通知しなければならないことになりました。また、派遣先企業としても、派遣スタッフが社会保険に加入していなければ、加入してから派遣するように求めなければならないこととされました。

しかし、これで実際に違反がなくなるかと思えば決してそうではありません。派遣スタッフが社会保険未加入でも派遣先企業がそれを黙認することも珍しいことではなく、派遣先と派遣元の双方で違反を犯していることもあります。

このような法律違反に対して、派遣スタッフは、その派遣会社を管轄する社会保険事務所に相談するなどして対策を講じるようにしましょう。

なお、雇用契約時に、派遣会社側から「社会保険に加入しますか?」などと打診を迫られたらその会社には注意が必要です。派遣スタッフが社会保険に加入しなければならないということを知らないことをいいことに、単に保険料を浮かそうとしているだけです。

 

■派遣スタッフが社会保険への加入を渋るケース

派遣スタッフが社会保険への加入を渋るケースは2つあります。

① 健康保険と国民健康保険の切り替えが面倒
② 国民健康保険のほうが保険料負担が少ないから

 

①の「健康保険と国民健康保険の切り替えが面倒」から説明していきます。派遣社員は、派遣社員として就業中は、健康保険と厚生年金に加入します。しかし、派遣契約期間が終了し、待機期間に入ると、今度は、国民健康保険と国民年金に切り替えなければなりません。

この切り替え作業が面倒で、派遣スタッフの中には、国民健康保険と国民年金に加入したままの人が少なくないのです。なお、現在では「はけんけんぽ」という派遣社員のための健康保険組合があり、はけんけんぽに加入すれば、派遣社員は健康保険の切り替えの煩わしさを回避することができます(詳しくは、「はけんけんぽってなぁに?」を参照)。

 

次に、②の「国民健康保険のほうが保険料負担が少ないから」を説明します。

・国民保険料は、全額自己負担
・健康保険は会社と折半になるので保険料は2分の1

になります。

しかし、それでも健康保険は国民健康保険より保険料が高い事が多く、保険料負担を少なくしたいと考える派遣スタッフが、健康保険への切り替えをせずに、そのまま国民健康保険に加入しつづけているケースがあるのです。

ですが、いくら派遣スタッフが国民健康保険の方が良いといって法的には、健康保険に加入しなければなりません。