所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得を対象として課税されます。サラリーマンの場合は、毎月の給与やボーナスから源泉徴収され、12月に年末調整で清算されます。
この毎月の給料から先払いしている所得税は、12分の1の額で見積もっているので、正確な所得が判明するのは12月末となり、年末に改めて所得税を再計算することになります。この作業のことを年末調整といいます。年末調整は、いままで会社がしてくれていましたが、退職後はすべて自分で行わなければなりません。
年末調整を終えれば、一般的なサラリーマンであれば、給与以外の収入がないのが通常なので、確定申告もごく小額であるケースがほとんどです。ですから、現役サラリーマンの大部分は確定申告の必要がなく、年末調整で税額清算ができるようになっているのです。
しかし、年の途中で退職し、年末まで再就職をしなかった人は、いままでは会社側が行ってくれた年末調整によって税金の清算を行わなくなるので、そのままでは所得税を余分に多く納めている事になります。こうした場合に、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をして清算する事で、納めすぎた税金を取り戻す事ができるのです。
では、もう少し具体的に、確定申告の必要がある人、確定申告がしたほうが有利な人はどのような人たちなのかを以下に記します。
■確定申告が必ず必要な人
(1) 老齢厚生年金と退職共済年金または企業年金など、2つ以上の年金の支払者に、扶養親族申告書を提出している
(2) 年金の他に、会社から給与をもらっている
(3) 年金以外に20万円以上の所得がある
■確定申告をすると有利になる人
(1) 年の途中で退職し、その後年内に再就職していないひと
(2) 退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないひと
(3) マイホームの売却によって損が出たひと
(4) ゴルフ会員権の売却によって損が出たひと
(5) 1年間に支払った家族全員の医療費が10万円を超えた場合
(6) 住宅が火災で焼失したひと
(7) 盗難で損失を受けたひと
(8) 公的年金だけが所得のひと
確定申告をすると有利になる人は、医療費控除、雑損控除、住宅所得等特別控除、寄付金控除などのいろいろな控除を受けられます。また、源泉徴収では受けられなかった社会保険料控除や生命保険料控除などがある場合も税金の還付を受けられる場合がほとんどです。
なお、所得が公的年金だけという人でも、源泉徴収額のほうが本来の税額より多くなるのが一般的です。確定申告によって差額を還付してもらいましょう。年金収入だけのひとは、確定申告をする際、非課税限度額(所得がかからない限度額)に当てはまるかどうか確認しておきましょう。限度額以内であれば申告する必要はありません。
■還付申告は1月1日から
確定申告によって納めすぎた税金を取り戻せることは上記で述べたとおりですが、この申告のことを還付申告といい、所得のあった年の翌年の1月1日から始まり、以降5年の間に提出すればいいことになっています。
したがって、2月16日から始まる確定申告より前であっても還付申告をすることはできます。還付申告書は、住所地を管轄する税務署に直接提出するか、郵送で提出するか、どちらでも可能になっています。