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派遣の職歴詐称は日常茶飯事!? -発想を転換させよう-

職歴詐称が違法であることぐらいは誰でもご存知のことと思いますが、派遣では、日常茶飯事のように職歴詐称が行われています。

職歴詐称」と言ってしまうと少し大袈裟な気もしますが、少なくとも、わたしが働いていたIT系においては、過去に経験したこともない職種をさも前職で経験したかのように職務経歴書に加えられることぐらいは、当たり前にありうることでした。

 
 

派遣の場合、派遣先企業に提出する職務経歴書を作成するのは全て、派遣コーディネーターが担当して行っています。したがって、職務経歴書にウソの職歴、もしくは誇張した職歴を書くのは全て派遣コーディネーターが行います。

しかも、まるで悪びれるそぶりもなく平気でウソの職歴を書いてきます(笑)。派遣先の面接で、いろいろ技術的なことについて突っ込まれて困るのは派遣スタッフの方なのに…。

派遣コーディネーターがウソの職歴を書く理由はただひとつ。

あなたの経験やスキルが不足しているからです(笑)。

 

あなたがどこの企業にいっても通用するほどの技術力を持っていれば、わざわざ職歴詐称をする必要はなく、単にありのままの事実を堂々と書けばいいだけですが、派遣に登録したての頃はそうはいきません。

特に、「未経験者歓迎」の文字に飛びついて派遣に登録した方は、ほとんどの場合、自慢できるほどの職歴や経験、スキルはもっていないことでしょう。

その場合、派遣コーディネーターは、そのような未経験者を派遣させられるような企業を見つけることができないのが普通です。となると、職歴詐称して、派遣スタッフの職務経歴書を少しでも華やかにしてあげることぐらいしかできないのです。

事実、わたしが派遣に登録して間もない頃は、何度も大袈裟な職務経歴書を提出させられました。派遣コーディネーターは、一応、職務経歴書を本人に見せてくれるのですが、

わたし:「え!?こんなのほとんどやったことありませんが・・・?」
コーディネーター:「少し大袈裟に書いといたけど、おまえならやれるよ。」

といわれ、仕方なく従いましたが、その後、派遣先企業での面接で、無い知識をフル回転させながら、必死で面接官を説き伏せたのはいうまでもありません。はっきりいって、面接官にはわたしの技量は見抜かれていたと思います。

面接官:「大変だと思いますが自信ありますか?」
わたし:「…」
(2秒後)
わたし:「はい、自信あります!前職でも経験しているので大丈夫です!」

 

開き直るしか、もう、その場を切り抜ける方法はありませんでした。もうなんとでもなれ~という思いでした(笑)。

結局、その派遣先業とは契約することができたのですが、入ってからがつらかったです。業務は、iSCSI というストレージの新技術を研究する業務で、まるで初心者に等しかったわたしが、インターネットにもほとんど載っていない、これから発展するであろう新技術をひとりぼっちで研究し、実際に、5台のLinuxサーバーを全て1人で構築し、検証まで行わなければならなかったのですから。

このように、職歴詐称されることは、派遣スタッフにとって非常にツライことなのです…。

ですが、ここで皆さんには発想の転換をしてもらいたいと思うのです。つまり、「職歴詐称されてひどい目にあったよ~」ではなく、「職歴詐称してもらったからこんなにいい経験をすることができた」と考えてほしいのです。

わたしは、今ではその派遣コーディネーターに感謝すらしています。自分にまるでスキルがなく、誰にも頼る人がいなかった状況の中で、頼れるのは自分の力のみ。人間、土壇場に立たされると、自分が思っていた以上に頑張れるものなんだということに気付かされました。

この業務が終了したとき、わたしのスキルは、その派遣先に行く前の何倍にもレベルアップしていました。最初から最後まで全てひとりで成し遂げることができた達成感といったら、それはもう一言では語り尽くせません。

あなたは、まず、何のために派遣社員になったのかを考えてみてください。

・「自分の都合に合わせて仕事ができる」からですか?
・それとも、「スキルアップがはかれる」からですか?
・もしくは、「正社員になれなかったから仕方なく派遣の道を選んだ」からですか?

もし、「スキルアップが図りたい」とか「正社員になれなかったから仕方なく」というのであれば、これをスキルアップするための絶好の機会と捉えてみてください。一般的に、なぜ派遣社員がスキルアップしやすいかといえば、正社員をしていたのでは経験することができないような業務にいとも簡単に就くことができるからです。

そして、そのような業務に就くことができるのは、派遣元と派遣先会社の「信頼関係」があるからであり、また「職歴詐称」のおかげでもあるのです。派遣先会社もバカではありません。派遣元が毎回、ウソの職務経歴書を書いてくることぐらいおそらく百も承知でしょう。派遣先企業はそれを知った上で、あなたの人とナリを見て判断し、採用の合否を決定しているはずです。

なので、一旦、採用されたからには、その期待に応えられるように一生懸命に頑張っていけば、おのずと結果は後からついてきます。派遣社員は、この繰り返しでどんどんスキルアップを図っていけるのです。

勿論、ありもない資格を持っているかのように装うことはもっての他ですが、自分の持っている技術や経験にプラスアルファした程度の簡単な詐称ならば日常茶飯事なことなので、派遣社員はこれをチャンスと考えられるぐらいの前向きな姿勢を持つことも時には必要だと思います。当然、異論反論はあるでしょうが…。